自宅でマスタリング
第2回 イコライザー
前回のコンプで音を整えた後、音源の中の各帯域を調整していきます。もちろん何もいじる必要が無ければよいのですが、最終的に音圧を上げるために、ピークがあって出過ぎているところを抑えたり、楽器が重なって濁ったりしているところを調整して、ハイエンド、ローエンドの処理を効果的に行います。
今回使用するパラメトリック・イコライザーは、調整したい音域の中心となる周波数 Frequency を選び、GainとQを変えることでサウンドを調整します。
Hi Shelfは、調整した周波数から上の周波数にかけて持ち上げる。Lo Shelfは、調整した周波数から下の周波数にかけて持ち上げる。Peakは、調整したい周波数をQ(幅、範囲)を調整することでピンポイント、もしくは範囲を決めて調整します。
少し抽象的な表現になりますが、各周波数帯のマスタリング時のイメージです。
12kHz〜 | 超高域 | エアー感 |
---|---|---|
6k 〜12KHz | 高域 | 艶(つや)、抜け感 |
2K 〜6kHz | 中高域 | 芯、ギター、声などの美味しいところ |
250 〜2kHz | 中域 | ボリューム感、肉付き |
150 〜250Hz | 中低域 | 厚み、Bassの質感 |
40 〜150Hz | 低域 | 太さ |
〜40Hz | 重低音 |
ここでは、あくまでミックスの補正なので、極端にブースト、カットは行わないのが理想です。せいぜい1〜2dBのカット、ブースト処理をする場合が多いです。
超高域12~16kHzあたりは、シェルビングタイプで1~1.5dBブーストすることが多いです。ここは空気感、透明感を少し上げるイメージです。音源でいえばボーカルのハイの成分、ドラムの金物、シンセなどです。必要以上に上げるとシャリシャリしてしまうので注意深く調整します。
次に中域の上の方、ピーキングタイプで1~4kHzあたりを見てみます。この辺はボーカルのピークを特に気にしながら調整します。ここをうまく調整することによって、この後、マキシマイザーなどで音圧を上げた時に歪んでしまったりすることを避けられます。ボーカルが盛り上がって声を張ったときなど、この辺が出てきます。この辺の帯域には、ギター、高めのピッチのスネアなどがあって、音楽的、感情的なパワー感など大事なところなので、ミックス時にピークに注意して仕上げればよいのですが、マスタリング時に調整する場合は、狭めのQでピークを探して必要な分カットします。もちろん、ボーカルが少し潜ってたりするときはブーストします。ブースト、カットとも1~2dBです。もしそれ以上必要な場合は、ミックスに戻って確認するのもありですね。
600〜700Hzあたりを広めのQで少し上げると、ピークを避けてふんわり肉付けすることができます。
ミックスがモヤっとしたりする場合は、300Hzあたりを狭めのQで1~1.5dBカットすると解決することもあります。ボーカルの下の方のもたりをカットするイメージです。
これらの処理をした後でもまだモヤつきを感じるときは、150Hzあたりを狭めのQで1~1.5dBカットすると解決するもあります。特にセンターの成分でキック、ベースがぶつかって濁って聴こえる場合には効果的です。
ローエンドですが、テンポが早いロック系などは、不必要な帯域をハイパスフィルターを使ってカットしたりもします。30〜40Hzくらいです。それによってスピード感が出たりします。最近のHip-Hop、EDMなどは結構ローを出す傾向にあるので、そうした音楽では逆に30〜40Hzを0.5〜1dBくらいブーストすることもあります。このローエンドの処理は、整備されたモニタリング環境でないと難しいので、スペクトラムアナライザーなどを使って視覚的に確認するのがよいでしょう。
ミックスの周波数バランスを視覚的に確認できるものに、スペクトラムアナライザー(スペアナ)があります。専用のソフトもありますが、最近のDAWのイコライザーにはスペアナ表示が付いているものもあるので、それらを活用してみてもよいでしょう。
筆者が普段使用してるのは、RMEのオーディオインターフェースに付属のTotalyserというものです。
まとめ
イコライザー処理は、ミックスの問題点を修正するイメージです。問題がなければわずかな調整で済みます。ここで問題点を見つけたらミックスに戻って再調整することも自宅制作なら可能です。
- *1 シェルビングタイプ:
- 簡単に言うとトレブル、ベース的な感じです。決めた周波数から上、下の帯域をなだらかにブースト、カットできるEQタイプ。
- *2 ピーキングタイプ:
- 調整したい周波数をQ(幅、範囲)で整えることによってブースト、カットします。狙った音をピンポイントで調整できるEQタイプ。